東京高等裁判所 昭和30(う)582 高裁判例
主 文
本件各控訴はいずれもこれを棄却する。
被告人Aの当審における未決勾留日数中百二十日を同被告人に対する原
判決の刑に算入する。
理 由
本件各控訴の趣意は被告人Bの弁護人福場吉夫提出の控訴趣意書及び控訴趣意訂
正申立と題する書面並びに被告人A及びその弁護人守屋勝男提出の各控訴趣意書記
載のとおりであるから、これをここに引用する。
被告人Bの控訴趣意について。
原判決挙示の各証拠によれば、被告人BがCに対する建築請負代金債務の担保に
供するため、原判示の如く、情を知らない同人に対し、偽造にかかる日本政府発行
名義の取引高税印紙を引渡した事実を認めるに十分でありしかも右証拠中原審第九
回公判調書中、証人Cの供述記載と当審における同証人尋問の結果によれば、右は
所論の如く右Cに有無を言わさず取り上げられたものではなく、被告人Bが進んで
これを担保に供したものであることが窺われ、この点に関する論旨引用の、同被告
人の司法警察員及び検<要旨>察官に対する各供述調書中、右認定に反する供述記載
部あは措信し難い。しかして印紙犯罪処罰法第二条第一</要旨>項前段にいわゆる偽
造、変造等にかかる印紙の「使用」とは、必ずしも所論の如く、納税の用に供する
ため印紙本来の用法に従つてこれを使用する場合に限らず、これを債務の担保に供
し、又は金融のため譲渡する等広く真正の印紙としての効用を発揮させるため情を
知らない他人に引渡し、又は呈示する等の行為を指称するものと解すべきであるか
ら叙上Cに対する債務の担保に供するため、情を知らない同人に対し偽造印紙を引
き渡した被告人Bの所為が同法条にいわゆる偽造印紙使用罪を構成することは多言
を要しない。原判示は、その措辞やや曖昧の嫌はあるが、情を知らないCに偽造印
紙を交付した旨を判示していることに徴し、所論の如く同被告人の所為をもつて偽
造の印紙を行使の目的をもつて情を知つている他人に交付する場合に成立するいわ
ゆる交付罪に問疑したものではなく、叙上偽造印紙使用罪の成立を認めた趣旨であ
ると解し得られるから原判決の事実認定及び法令の適用はいづれも極めて正当であ
つて何等の過誤はない。
論旨は事実誤認及び法令の適用の誤を主張するがいずれも証拠に基かず且つ法令
の解釈に関する独自の見解に出でたものであつて採用することを得ない。論旨は理
由がない。
(その他の判決理由は省略する。)
(裁判長判事 三宅富士郎 判事 河原徳治 判事 遠藤吉彦)